『MAJESTIC』 

柏木広樹 & 光田健一 “二人旅” 2nd Album『MAJESTIC』

2021.1.1 release
FTCD-3002 / ¥3,000(tax in)

アルバムに寄せて ー初めにー

 “二人旅”の2枚目のアルバムをいつ出そうか?ということは、2019年にはすでに話していましたが、やっと実現したこの『MAJESTIC』のレコーディング、実は2020年1月から静かにスタートしていました。島根県安来市にあるアルテピアというコンサートホールのイメージソングを作り、実際にそこで録ったら素晴らしいのでは?ということで、1月の寒い中、暖かい音がするアルテピアでのレコーディングを行いました。素敵なホールを使わせていただけるとあって、ニューアルバムに収録する他の曲ももちろん何曲か録音しました。

 その後、ツアーが始まりツアーが中断し、ステイホーム期間が始まった頃にさらに新曲の作曲に取り掛かり、少しずつ活動を再開できるようになり、YAMAHAさんの強力な協力をいただいて、レコーディングを続けることができました。今回の作品は、リズムを入れたり、ザ・ハモーレ・エ・カンターレにゲスト参加してもらったりと、1枚目とはかなり違う雰囲気になっていると思いますが、とても“二人旅”らしいアルバムになっていると思います。

 健ちゃんも、僕もお客さんの近くに行って「楽しい?」って聞きながら演奏することが大好きで、コロナのせいで、より一層その想いが増したと思うのですが、そんな音の香りがするアルバムだと思っています。まだまだこの先の状況は分からないところではありますが、皆さんの住んでいる街に「ただいま〜!ハイ、お土産!」って言って『MAJESTIC』を持って行ける機会をたくさん作れたらと思います。

柏木広樹



 タイトルの「MAJESTIC」の通り、雄大でロマンチックなアルバムが出来上がりました。「マジェスティック」はイタリア語にすると音楽用語の「マエストーソ」になり、それに極めて近い意味の音楽用語が「グランディオーソ」。同様に「壮大に」「雄大に」「堂々と」という意味があります。たったの二人の合奏ですが、二重奏を遙かに超えた広がりも感じられ、優雅でいて、人懐っこい感じが極めて「二人旅」らしい。そんな僕等にとっても、年相応でドッシリとしたアルバムになったような気がします。「夕映えのグランディオーソ」と、柏ちゃんが発案した「Spring Has Come」の壮大なサンバ感のあるメロディーが、このアルバムの方向性を決めたと思います。
 合作もなかなか板に付いた感で、二人の目指す世界が同じなんだなぁと聴きながら感じています。音楽を志してから「二人旅」が結成されるまでには、それなりの、それぞれの人生の旅があって、それが重なり合って何年もたった今でも「やっぱり音楽は旅だな」「人生も旅だな」と感じ合って、そしてまた旅をする。世界は広いし、日本も広い。柏ちゃんと旅していると、いつでも広い視野でいたいと思わせてくれます。

 ささやかに、のんびりとゆっくりと、これからも僕等を支えてくれる皆さんに、幸せと歓びの音楽を届けていきたいと思っています。いつも「二人旅」を気にしてくださっている大切な皆さまへ、感謝を込めて。

 光田健一 

〈収録曲〉

 陸路を旅しながら車窓から眺める風景は、実にのどかで、遙かで美しく、時に厳かで、大自然の凄さと同時に、この国の田舎はホントにいいなぁと感じます。九州を一周する「ななつ星 in 九州」という列車は、たくさんの人々に愛されて走り続けています。沿線の町や村の人々は「ななつ星 in 九州」が通り過ぎる度に、みんなとびっきりの笑顔で大きく手を振ってくれます。おばあちゃんもおじいちゃんも、子供たちも、みんなが、夢を乗せて走る列車が走り抜けるその時間を、心から待ち望んでいるのがわかります。
 思えば、毎年たくさんの街の人々が、僕等「二人旅」を迎えてくれて、笑顔で音楽を楽しんでくれています。こんな僕等をいつでも待っていてくれる皆さんへの感謝の気持ちを乗せて、これからも、歓びの音楽を届けていきたい!…心からそう思います。 (光田)

 皆さんと一緒に歌えたら良いなあって曲を今回も作りたくて、自分たちも、お客さんも、春が来ると自然と笑顔になるよね〜って思いながら、メロディを書き始めました。
 今回はなんとハモカンの皆さんの豪華コーラス入り!いつか皆で歌えますように。 (柏木)

 聴き手になった時は、やっぱり楽しい音楽っていいなぁ〜と単純に思えるのですが、創り手になった時には、どんな音楽でも、ひとつひとつの音、表現方法、重なり具合、響き、想い…とにかく微に入り細を穿って、丁寧に、そして大切に紡ぎたいという念に駆られます。その集大成のひとつが、恐らくこの楽曲でしょうか。
 葉っぱからこぼれ落ちるひとしずくが、もうひとつのひとしずくと連なって、合わさってせせらぎになり、やがて河になっていくような、そんな音楽…。ひとりの小さな涙も、その一瞬を一生懸命に、大事に生きてきているからこそ、こぼれ落ちる、とても大切な想い。そうして誰かのために捧げることは、いつしかきっと大きな海のような愛に包まれるから…。音楽にそんなチカラがあったら、どれだけ素晴らしいだろうか。
 この場を借り、医療関係にご従事されご尽力されている皆さま方に、深く感謝と敬意を表します。 (光田)

 古いヨーロッパの見知らぬ国。失恋の痛手を振り払うかのように、過去を捨て去り、独り激しく舞う淑女…。そんなイメージで2003年に生まれた楽曲でしたが、2020年の世の混乱期の東アジアのどこかの国で、それなりにいい年の男二人が奮闘し、混沌とした社会に向かって「オレたちはまだまだ美味しいものが食べたいぞ!旅をさせろ〜!」と訴えながら、謎の踊りをする…そんな新型ダンスミュージックが誕生しました。
 ブルガリアの民俗舞踊のような、7/4拍子という、いわゆる変拍子を基本に、打楽器のループなどを重ねて構築。チェロのエフェクティブなサウンドなど、ライブツアーの視点からはちょっと離れて、いろいろと二人で実験しながら楽しんで創作しました。 (光田)

長年お世話になってきた、エンジニアの赤川新一さんのことを想いながら作りました。
 “二人旅”の1stアルバムも、僕のソロ・アルバムも全てレコーディングしていただいてきて、あまりに突然の別れには、悲しみと絶望感しかありませんでした。
 赤川さんと一緒に居られた“二人旅”の時間は、まさに「Beautiful Days」だったのです。 (柏木)

 ショーロの曲を作りたいな〜ってぼんやり考えていたら、何ということでしょう、メロディがスッと降りてきました。こんなこともあるんだな〜と思いつつ、メロディを健ちゃんに送ったら、何ということでしょう、自分が考えていた100倍返しの楽しい曲になっていました! (柏木)

 このタイトルは、ブラジルのことわざからヒントを得ています。アマゾン川のピラニアはその凶暴な歯で何でも食いちぎってしまいます。そこで、ワニが考えたのは、背中の固いブツブツ部分を水中に向ければ、ピラニアも歯が立たない…と。つまり「ピラニアだらけの川で、ワニは背泳ぎする」ということわざとなり、これが「危険はなんとしてでも回避しろ」というような意味になるんだそうです。ワニが必死に背泳ぎをしようとして、なかなかうまくいかずにクルクル回転している様子を想い浮かべながら聴いてくださいませ。 (光田)

 この曲が出来るきっかけに、“二人旅”にとって、とても大事な瞬間がありました。アルテピアでのライブのリハーサルの休憩時間、外の空気をちょっと吸いましょうと楽屋から外に出てみると、、、この曲のメロディーがそこに拡がっていました。 (柏木)

 日本古来の3-3-7拍子は、実は4/4拍子です。じゃ、リアル3-3-7拍子の曲があったら面白いから、来年のツアーまでに作ってきま〜す!と発言したことから、この曲が出来ました。我々は有言実行します!(笑) (柏木)

これまでの自分のバラードの中でも、特に思い入れが強い楽曲です。
 僕のソロ・アルバム『VOICE』で作りましたが、この曲もエンジニアの赤川さんに向けて生まれました。健ちゃんの「想いだけでメロディを作りなよ」の一言がなければ書けなかった曲です。
 赤川さんに生前よく言われた言葉は、「大丈夫だよ、柏木くん」でした。大丈夫です。まだまだこの曲を演奏していきますから。 (柏木)

 テーマはズバリ「空を通して何もかもがつながってるよ」です。2020年、人と人が顔を合わせることすらできない、あり得ない時代。だからこそ生まれた楽曲。遠く離れていても、お互いが同じメロディーを心に浮かべたら、それはもう、そばにいるのと同じこと。どんなに小さな声でも、その想いはいつか必ず誰かに届く、どこかで誰かが何かを感じているはず…そんなメッセージを、ささやかに込めています。
 いろんなチェロがサウンドを支えています。いつかみんなで、会場全体を響かせながら♪ラ〜ララ〜ララ〜ラ〜ラ〜と歌える日が来るのを、ゆっくりと待ちましょう。 (光田)

 こんな素晴らしい音楽をこの世に残すなんて、どれだけの深い音楽観、感性、慈しみ、作曲技術からくるものなのだろう。20代半ばで初めてこの楽曲を聴いた時からずっと、憧れ、目標にしてきました。2020年に旅立たれたエンニオ・モリコーネさん。初来日の2004年、東京国際フォーラムへ2日連続で聴きに行き、両日共に感動で泣き暮れていたのを覚えています。
 そもそも、この映画そのものが、映画を愛する人の映画ですから、無論その音楽も、音楽を愛する全ての人の心を震わせるんだと思います。これでもか!という程に、人間愛が込められた楽曲だと感じます。
 いつだったか、二人旅の仙台公演の後、そのままレストランパリンカさんで二人でワインなんかいただいて、良い気分になってしまった僕が、おもむろにこの曲をピアノで弾き始めたら、いつの間にか柏ちゃんがチェロをわざわざ出してきて、即興で、しかしながらほぼほぼ完璧に合奏したことがありました。あの瞬間、コイツとは一生やっていける、と心底思ったものです。 (光田)

<musicians>
Cello & Chorus 柏木広樹
Piano, Keyboard, Programming & Vocal 光田健一
Chorus (M-02,10)  ザ・ハモーレ・エ・カンターレ … 長谷川友二 / 加藤慶之 & 荒井健一(RAG FAIR)


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